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07.水曜日の夕暮れ

※ラダの、街での他人との肉体関係の気配がある描写が含まれます※ 思いのほか遅くなってしまった。ガラムが勝手に衝撃を受けたラダとの通話から水曜日を無駄に一度過ごしてしまった上、現在時刻は午後6時過ぎ。連れてきたキリのことを考えると少々問題のあ…

06.儀式の支度★

※作中で使用している香油は「現実に存在する肌、粘膜へ使用できない花から抽出した成分が含まれるアロマオイルをモデルに想像した架空のアイテム」としてお読み頂ければ有難いです※ 揺らめくろうそくの炎に照らされた箱の中身を前に、キリとカナンはふたり…

05.開かない扉

 流石に、この状態のカナンに勉強を強いることはできない。ガラムはそう判断し「釣りでも行くか?」と声をかけた。顔を覆う前髪の隙間から恨みがましい目がのぞく。常にはない虹彩の色、まるで歓楽街のネオンのようなどぎついピンクがぎらりと光を反射した。…

04.選定の儀

「緊張してるか?」 キリの耳に息を吹き込むようにしてカナンが囁く。緊張していない、と言えば嘘になるが、カナンのこれは自身の緊張をごまかすためか、キリへの配慮か。どちらにしろかえって落ち着かない。「してるのと、してないのとで、何が変わるんだ」…

03.仮宮の朝★

 閉じたまぶたを貫いて朝の光が入ってくる。こんなに光が強くなっているってことは、とキリはあわてて飛び起きた。学校へ行かなくていい、となるとどうも気が緩んでしまう。「カナン! 寝過ごした、起きろ!」「……べつに、ねててもよくないか……?」「だ…

02.西日の強い街

 刺すような西日をやわらげようと目を細め、ガラムは本島に降り立った。行き交う人波や車、普段の島の生活にはないものに辟易する。悪臭、騒音、他人のぴりついた感情の気配――用事がなければ来たいところではない。 こんなところに住んで、暮らしていける…

01.光差す島

 キリには懐かない鳥が当てつけがましい羽音を立てて飛び去った。浅瀬に腰まで浸かったカナンは、一瞬前まで肩で好きなように遊ばせていた鳥を気にも留めず、キリに笑顔を向ける。「お帰り、キリ。 これでしばらくは島にいるんだろう?」「ああ。 儀式の夜…

番外編:浦部真哉の共感

「05.宮代善爾の懊悩」の途中、一方そのころ……の内容です。 どうしたらいいか悩んでいるのだろうな。それはとても伝わってくるけれど、自分がこんなに『しゅっとした』お兄さんの、何か助けになれるとは思えない。 |浦部真哉《うらべしんや》はせめて…

番外編:那須ゆかりの仁義

 速足で通り過ぎざまに一応現状をチェックする。アイラインが少し滲んでいるものの、会社での他人との距離でバレるような状態ではない。 だいたい電話越し、音声でしか人と相対しないというのに顔を作る必要があるのか? 那須ゆかりは定期的に抱く苛立ちと…

抜き差しならない夢の中

性行為すら電流と信号を介して済ませる時代、志賀恭明(しが やすあき)は不眠症改善の為通っている、デジタルドラッグを処方する電剤師ロンダンに直接触れたい欲を孕む恋をしていた。 なかなか改善しない志賀の症状にロンダンは、自らも初めて用いるプログラムコードを提案する。『決まった相手とのちょっとエッチな夢でスッキリして眠れる』との効能にロンダンを期待した志賀がその夜見た夢は――。

再生可能なオオカミの牙

結婚目前にして手ひどい裏切りと左遷を受けた過去で女性を恐れるようになったお客様相談窓口コールセンター長、宮代 善爾(みやしろ ぜんじ)は、会社の同性愛差別、偏見により配属された新卒のゲイでネコを自認する崎谷 樹(さきや いつき)に好意を寄せられている。 献身的な崎谷のサポートに宮代は、自分が崎谷に抱く感情が何なのか悩みはじめて――。

10:崎谷樹の忘我★

 今から抱かれるつもりで、並んで電車に乗っている。こんな時どんな顔をしたらいいのか、なんて、初心を装う意味も必要もないが誰かに聞けるものなら聞かせてほしい。 もちろん、男同士のセックスで身体を繋げること、挿入をしなければいけないって訳じゃな…