短編小説

蓮喰い

農村の出で科挙に合格し、主簿の役を任ぜられて地方に赴任した黄柴雲(おうさいうん)。赴任先で厄介になる士大夫、盧舜琦(ろしゅんき)の屋敷には『若い男が居付かない』という噂が流れていた。仕事に倦み、買って出た屋敷の庭仕事に興じる中柴雲は、荒れた庭の奥に佇む離れに暮らす一人の画家と出会う――。

キャンディバーに悪戯を

休暇で降り立った街のハロウィンで賑わうショッピングモールで、事件に遭遇した宇宙規模民間警備会社<アネモイ・セキュリティサービス>所属のアルベルトとベルナルド。新旧エースパイロットの迅速な対応で事件はスピード解決、ご褒美のように降って湧いたふたりきりの時間をどうやって過ごそうか――。

抜き差しならない夢の中

性行為すら電流と信号を介して済ませる時代、志賀恭明(しが やすあき)は不眠症改善の為通っている、デジタルドラッグを処方する電剤師ロンダンに直接触れたい欲を孕む恋をしていた。 なかなか改善しない志賀の症状にロンダンは、自らも初めて用いるプログラムコードを提案する。『決まった相手とのちょっとエッチな夢でスッキリして眠れる』との効能にロンダンを期待した志賀がその夜見た夢は――。

ネコの気持ちはわかるまい

新卒採用の会社でいきなり、ネットに載せられていた過去の写真を理由に左遷扱いを受けたゲイでネコを自認する崎谷樹(さきや いつき)。配属先の所属長、宮代善爾(みやしろ ぜんじ)は崎谷の好みそのもので、「待っていた」という言葉に心中密かに喜ぶがその裏には会社の理不尽故の事情があって――。